「積層体」「積層構造体」という表現、よく見かけますよね。英訳ではつい laminated bodylaminated structure としてしまいがちです。実際、Google Patents で検索するとそれぞれ10万件超のヒットがあり、P&GUS10596043B2)や CorningUS10166744B2)といった企業の特許でも使われています。


でも、「laminate」って本当に「積層」と同義?

英英辞典では “laminate” は以下のように定義されています:

  • to make by uniting superposed layers of one or more materials (as by means of an adhesive or bolts)

  • to unite (superposed layers of material) by an adhesive or other means

つまり「接着などによる一体化」という意味で、「単に積み重ねる」という意味合いとは異なる可能性があります。


米国裁判例:Blackbird Tech LLC v. Lululemon Athletica, Inc.

この事件では「laminated」の解釈をめぐって争いがありました。

  • 原告の主張:“sewn or otherwise united”

  • 被告の主張:“joined by means of heat or adhesive bonding”

  • 裁判所の判断:被告側の定義を採用

→ 明細書に定義がなければ、laminated は「熱または接着による接合」と解釈される可能性がありそうです。


英国でも同様の見解

2025年2月の UKIPO「Opinion 27/24」では、“laminated” について以下のように判断:

  • “manufactured by bonding layers of material together”

→ こちらも「接着を伴う積層」であることが前提です。

ちなみに、英国には「Request for Opinion制度」というものがあり(日本の判定制度のようなもの?)、特許の有効性や特定行為の侵害の成否について、誰でも法的拘束力のない見解を請求できるそうです。(知りませんでした!)


🔍 まとめ:laminated の使用は慎重に

「積層」が単に「層を重ねた構造」を意味する場合、”laminated” と訳すかどうかは慎重に判断した方がいいかもしれません。

  • 接着や熱圧着が伴う → laminated structure

  • 単なる層の積み重ね → stacked structure / multilayer structure / layered structure などが無難?


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