特許明細書では、特殊な二字熟語がよく使用されていると思います。「付勢」という用語も頻繁に登場します。『特許技術用語集』(日刊工業新聞社)には、「勢いを増加すること。勢いが付されること。to apply energy, to be spring biased, to be biased」と記載されています。バネのことを「付勢手段」と呼んだり、バネが別の部材に力を与えることを「付勢する」と言ったりすると思います。
「付勢」は「to bias」と訳すのが割と定石だと思うのですが、「bias」だと、「偏らせる」「バイアスをかける」のような意味になってしまい、「勢いを付ける、力を与える」という意味にならないのではないか、とずっと考えてきました。で、「urge」「impel」「apply a force to」等々、いろんな訳を検討してきました。(ちなみに、Merriam-Webster Unabridgedには「to give a bias to : give a settled and often prejudiced outlook to」「to apply a slight negative or positive voltage to (something, such as a vacuum-tube grid)」とあります。)
ふと、Garrod’s Glossary of Judicial Claim Constructionsではどのように定義しているのだろう、と思い調べてみると、「”biasing” — “exerting force in a particular direction toward the open end of the battery holder.” Invisible Fence, Inc. v. Perimeter Technologies, Inc., 2006 U.S. Dist. LEXIS 33792 (N.D. Ind., May 25, 2006)」などなど、判例に基づく定義があっさり出ていました。
な~んだ、「bias」でいいんじゃないか!ということで、一周回って「bias」という訳に落ち着きました。 😛